奥秩父 千平(1978m)、大平原 (1969m) 2010年11月13日

所要時間 6:43 林道−−7:41 万年石−−8:05 千平 8:20−−9:21 大平原 9:37−−10:27 林道

概要
 稜線東側の林道より周遊。起点は町田市自然休暇村。この稜線は下部はカラマツ植林帯で上部はシラビソ樹林。稜線上は道は無いがひどい藪の箇所は少ない。ただし、地形図で崖マークがある箇所は西側だけでなく東側も切れ落ちており、千平〜大平原中間地点の1980m峰は迂回せずとも通過可能だったが、大平原三角点南のピークはギャップの連続で稜線を行くことができず、最初から大きく迂回した方が手っ取り早い。千平は樹林に覆われるが西側の展望あり。大平原は露岩のピークで展望良好。真っ白な立山、劒岳、後立山連峰が見えた。


 奥秩父の2000m峰は全て登り終わったが、川上村周辺には未踏の1900m台の山がいくつかある。雪が降っても登れるが車で行くのが危険になるので雪が降る前が安心して行けてよろしい。いくつかある1900m峰の中で、今回は稜線でつながって距離が近い千平、大平原を目指した。道が無いのでどこから登ってもいいが、長峰に登った経験からして東側の林道はゲートが無く進入可能なことが分かっていたのでそちらから入ることにした。まあ、今回は町田市自然休暇村付近から周遊する積りなので林道は関係ないが。最初に千平に登って稜線を北上、大平原に登ったら南鞍部まで引き返して東の谷を下り林道に戻る計画だ。

 問題は稜線上の崖マークと稜線に至るまでの藪と露岩だ。奥秩父といえば石楠花藪と露岩が有名で、道がないルートだと様子が皆目分からないのが難点だ。地形図で露岩マークが無くても実際は岩で歩けないことはよくあることだ。まあ、先日の離山のように迂回不可能な地形ではないだろうから、大きく下を巻けば大丈夫だろう。

 韮崎ICで降りて清里、野辺山を経由して川上村に入り、町田市自然休暇村より少し奥に入ったところで寝た。この時期としては気温が高めで途中の温度表示は最低でも3℃だった。舗装が終わってダートになっても車が通行した形跡は濃く、特に心配はない。わざわざダートまで入らなくてもいいのだが、舗装道路上だと車の行き来があって安眠できない可能性があって奥に入った。すぐに右手に駐車スペースがあり、ここで一晩を明かした。

林道から斜面に取り付く 最初はカラマツの植林帯

 翌朝、さほど冷え込まず窓ガラスの水滴は水のまま。飯を食って充分明るくなって出発。西側斜面を適当に登っていけば目的の尾根に出るので息は神経を使わなくていい。林道脇には荷造り紐が延々と流してあり「入山禁止」の看板もあるが、私は登山が目的だしもうキノコシーズンも終わっただろうと気にしなかった。最初はカラマツ植林帯でちょっとだけ廃林道を巡り、終点からは北方の尾根に登る。下草は無くどこでも歩けるが、これがどこまで続いてくれるか。

木が邪魔で見えないがこの先が露岩 露岩が出現
幕状岩は左から巻いた 露岩上部を急登中

 少し標高を上げるとそれまでの植林帯から斜度が一気に増し、露岩の尾根に変化した。まっすぐは登れずどちらを巻くかちょっと考えたが、ぱっと見で南から行けそうな気配で消えもの道らしき筋を辿って斜めに登っていった。地形図では尾根の両側ともなだらかそうな表記だが実際は南側はかなり急峻で、ヘタに岩が立ちはだかっていたら進めない状態だった。しかし、南に巻いていくと露岩が切れて樹林がつながった状態となり、傾斜はきついが難なく登れるルートがあった。帰りは別のルートで下る予定だが、万が一ここを戻る可能性も無きにしも非ずで数箇所に目印を残した。

傾斜が緩む 高度を上げる
1800m肩直下。石楠花登場 1800m肩

 傾斜が緩むと露岩帯が終わってなだらかなシラビソの尾根に変貌し、適当に上を目指して登っていく。広い尾根でどこでも歩けそうだが尾根直上よりやや北側を登った。やがて上方に石楠花の濃い藪が見えてきたが、おそらく1800m肩直下だろう。この先であの藪じゃ苦労しそうだと覚悟して進んだが、意外にも尾根直上には刈り払われたとしか思えない空間が伸びており、肩の南側を巻くように登って難なく肩に到着。東側は一面の石楠花藪だが西に延びる尾根は藪は無く快適に歩けそうで一安心。

1800m肩から見た千平方向。山頂はまだ見えない 万年石

 尾根を水平移動して登りにかかると斜面左手がザレて尾根上には危険は無い露岩が登場、そして意外にも「万年岩」なる標識がかかっていた。まさかこんなところに標識があるとは思いもしなかったので驚きだ。何せここは登山道は無く歩く人はほぼ皆無だろう。標識をつける意味が無い。南側のみ開けて国師ヶ岳方面が見えた。

ここにロープがあるのだが写真では見えない 浅い谷を登る

 この先で再び傾斜が出てくる。計画ではここからは尾根を行かずに尾根北側の谷を登ることにしていた。というのも尾根は途中から等高線が込み合っていかにも露岩が出てきそうな雰囲気だからで、それよりもずっと等高線の間隔が広い谷間を登って稜線に達するほうが安全度は高いだろう。谷に入るところでなぜかトラロープが2箇所登場。フィックスロープが必要な場所ではなく、立入制限場所を示すにしても短い区間だけ張ってあって意味不明だった。

左の尾根に登る 尾根に出た
露岩は山頂ではなく山頂東の1930m付近 千平山頂へと登る

 谷(といっても水があるわけではなく地形的に凹んでいるだけ)が2又に分かれるところで左に進み、そのまま尾根を目指してシラビソ樹林を登り続け、最後は少し背丈が低くなったシラビソ樹林で尾根鞍部に出た。たぶんここは千平北側鞍部だろうと考えて左の露岩に登ろうとしたが、どうも右手の尾根が高すぎる。GPSの電源を入れて山頂位置を確認すると、まだ南西にあるではないか。ということはここは主稜線ではなく東に張り出した尾根上か。たぶんさっきの谷の右側が主稜線へ突き上げる正しいルートだったようだ。少し予定のルートと違ったが大差はなく、このまま尾根を上がっていく。少し矮小なシラビソ樹林だが密林状態ではないので問題なく高度を上げる。

千平山頂 布KUMOがあった

 そして主稜線に出ると石楠花の藪が登場、少しだけ藪を漕ぐと千平山頂に到着。何も無い山頂だと予想していたが布KUMOが出迎えてくれた。おお、KUMO氏も登ったのか。後で調べてみたらDJFも登っていた。地形図に山名が無いこんなところに登るのは山名事典の山を気にする人だけだろう。山頂直下西側のみ樹林が切れて展望が開け休憩場所としてちょうど良かった。この時期にしては気温が高く、体を動かしていなくても寒さを感じなかった。でももう八ヶ岳は白く、あちらは寒そうだ。ま、こちらより1000m近く標高が高いからな。

 休憩を終えて北方の大平原に向かう。問題はその間の2箇所の崖マークの稜線を通過できるかどうかで、行き詰ったら基本的に東側を巻けばいいだろう。問題はもし大平原山頂が鋭い岩峰だった場合で、クライミングの力量のある人でないと登れないような山だったらこの先は無駄な行動となってしまうが、とにかく行けるところまで行くしかない。

石楠花を突っ切って北上開始 すぐにおとなしいシラビソ樹林に変貌

 再び石楠花の藪を突っ切ると肩があり、ここで右に直角に曲がる。すると背が低めだがシラビソ樹林に変貌して藪から開放され歩きやすくなる。踏跡は見られないが藪が無いので適当に下っていく。

鞍部から見た1980m岩峰 尾根上は岩があるがちょろっと巻けば稜線上を行けた
1980m峰から見た八ヶ岳
1980m峰から見た千平(一番手前の低いピーク) 1980m峰から見た大平原
1980m峰から見た金峰山から御座山(クリックで拡大)
1980m峰から見た奥日光(クリックで拡大)

 1980m峰の登りにかかると露岩が登場し始めるが、今のところは尾根上全部がヤバい岩場となる箇所はなく、右か左に少し逃げれば通過OKが続く。概ね尾根東側が樹林となっていて迂回経路に使えた。露岩上というか西側が崖になっていて西側の展望がいい場所が多い。このピークは最後まで尾根上を歩いて壁で行き詰る箇所はないまま下りが始まった。

鞍部へと下る 時々切り立った露岩があるが迂回して下れた

 下りでも所々壁が登場して直進できない場所はあるが、そんな箇所では概ね東に下れる場所があり、戸惑うこともほとんどなく鞍部に到着した。途中でこの先の1960mピークが見えたが恐竜の背中のように痩せてゴツゴツした岩が連なっており、尾根上を進むのは無理そうに思えた。

鞍部の先はこの岩で登れない 東の基部を迂回
ここから稜線に這い上がる 稜線に出た

 しかし鞍部の先はいきなり岩壁で登れず、西側の方が巻きやすそうだが地形図では東の方が傾斜が緩く行き詰る可能性は低いので、岩の基部を東へと下っていく。地形図と違って稜線東側も岩壁が続いており、かなり大きく下ってしまう。こうなると心配になり、稜線に復帰できそうな場所を探しながら進んで行くと上方まで樹林が続く場所があり、そこから稜線に登った。

まだ稜線上をいける だんだんヤバい雰囲気が・・・
この岩は登れず西を迂回 西側基部はこんな感じ
樹林が出てくるが上方はまだ幕状岩が続いている ここから再び稜線に取り付く
稜線に出たはいいがいきなり岩壁で進めず 今度は東の基部を巻いた

 稜線に登ったのはいいが、どこまでこのまま尾根上を行けるのかは大いに不安だ。少しの間は穏やかな尾根で安心して歩けたが、再び岩壁が行く手を塞ぐ。岩の左右を見て西側の方が巻きやすそうだと判断し左へと進む。地形図では急傾斜を行くようなイメージであるが実際は岩の基部はそんなことはなく通常の傾斜であり、カラマツ植林帯で安全に歩けた。あとはどこで稜線に復帰するかだが、今度は幕状の長い岩壁帯が続いてなかなか上に上がれない。山頂まで残距離が100mを切った地点でそろそろ上がらないとマズいだろうと判断し、樹林が生えた急斜面を強引に登って尾根に復帰した。しかし再び岩壁に阻まれ、今度は稜線東側に下った。そして考えた。この調子では尾根上を行っても岩壁で進めない可能性が高く、山頂直下付近に達してから上を目指した方が得策だろう。そうなればそれまでは大きく巻いても安全ルートが良かろうと。

ここから再び稜線を目指す 結構な傾斜

 GPSの表示を見ながら稜線東側のこれまた幕状岩の基部に沿ってシラビソ樹林帯をトラバースしていく。結構下ってしまったが、そうしないと岩にぶち当たって安全に横移動できないので仕方ない。地形図の表記とはかなり異なるが、この付近は樹林に覆われているので航空測量では岩の存在が分からないのであろう。そろそろ山頂が近い場所でやっと岩が途切れ、かなり上まで樹林が続く浅い谷状地形が登場、ここを登ってみよう。結構な傾斜だが樹林があるので木に掴りながら高度を稼ぐ。

稜線直下 大平原三角点峰南鞍部に出た

 稜線に出ると小鞍部で、南は岩壁、北は松が生えたなだらかな尾根で、GPSによると山頂は北側にあるとのこと。こんな地形が山頂まで続いていれば安全なのだが。ここまでずっと腰には熊避けの鈴をつけて歩いてきたのだが、小鞍部に出てすぐに南の斜面でガサガサと木が鳴る大きな音がして荒い鼻息と共に大型動物が逃げていった。その斜面は樹林なので姿は見えなかったが、足の速さは明らかに鹿より遅く、鹿が鼻息を荒げるのは聞いたことがない。猪の可能性もあるが標高2000m近い場所には猪はいないのではなかろうか。ネットで調べたところ、積雪量30cm以上の日が70日(2ヶ月強)以上続く地帯では猪はほとんど見られないそうだ。たぶん川上村はそれに該当するだろう。とすると、やっぱり熊の可能性が高い。逃げていった方向が西なので私の行き先、帰り方向とは逆方向なので、例え熊だったとしても問題ない。念のため手を何度もはたいてこちらの居場所を知らせてやった。

大平原山頂 大平原の布KUMO

空白

大平原から見た南方
大平原から見た奥秩父主脈(クリックで拡大)
大平原から見た信州/西上州国境山脈(クリックで拡大)
大平原から見た浅間山
大平原から見た八ヶ岳(クリックで拡大)
大平原から見た立山、剣、後立山(クリックで拡大)

 穏やかな尾根を僅かに登ると樹林が開けて西側が切れ落ちた崖の上に出て三角点が出現。ここが大平原山頂だった。ここにも布KUMOがあったが千平の布と違って紫色だった。これは富山の大猫山で見たものと同じだ。すぐ横に荷造り紐らしき薄赤いビニール紐が縛られていたが、どうもこれはDJFのピンクリボンらしかった。数年の劣化で色や質感が結構変わってしまうようだ。

 さて、帰りであるがこの稜線を戻るのは大変なので、1980m峰との鞍部まで東斜面を巻いて進み、あとは東に下る谷を進んでみよう。そのまま谷を下ると町田市自然休暇村から大きく北側に下ったところに出てしまい、車まで登り返す必要が生じるので途中から谷を離れて右よりに進路変更する必要がある。

南鞍部に下る 稜線東に下って基部を延々と巻く
こんな感じの岩が続く 小尾根を越えたところ

 山頂南側の鞍部から急斜面を岩壁基部に下り、そのまま基部を延々と巻きながら南下する。行きでトラバースした箇所より下部にも岩壁帯があり、帰りは稜線よりもかなり下がったところを巻くことになった。でも稜線上を行ったりきたりするよりは楽かもしれない。

谷を東に下る 谷が狭まると倒木登場
水が出てくると人の形跡あり 谷がきついところは一時的に左を巻いた

 小尾根を乗り越えると目的の谷らしく、ここから一気に下を目指す。谷は広くて水はなく、適当に歩きやすいところを歩いていく。やがて谷の幅が狭まると倒木が出現、谷全体を塞いでいて薄いところを潜り抜ける。地形図を見るとまたすぐに谷が広がるかと思ったら意外に狭い区間が続いた。ここは最初は乾いた谷で、そのうち伏流水があるようで足元で水が流れる音が聞こえるようになり、もう少し下るとチョロチョロ水が流れ出して給水可能な場所となった。

谷が広がると右に進路変更 林道到着

 谷の傾斜がきつくなるところで左の斜面にいったん逃げて、傾斜が緩んでから再び谷へ。水量はごく僅かで渡るのには何の支障も無い。緩斜面になってから谷から大きく右に外れて下っていくと町田市自然休暇村の建物が見えてきた。さらに斜面を右に巻いてダートの林道に降りると車はすぐだった。

 

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